妙な癖

 

私は昔から

ある日突然　なんもかも捨てて

知らない所へ身を置きたくなる時がある

誰も自分の事を知らない未知の場所

特別不満があるわけでもなく

ふと、普通の日常にそんな事を思ったりする

しがらみやわずらわしい感情も持たずに

なにもかも最初からはじめられるような気がして

若い頃はふらっといなくなったりもした

あてずっぽに電車に乗り

知らない場所の知らない街へ行った

すえた匂いの街の

怪しげな店の看板を見て

時給2500円くれるというので、働いた事もあった

でも、誰も知る人はいないから躊躇する事もなく

下着の上に透けすけのベビードールを着せられ

テーブルの上で踊る事も不思議と嫌じゃなかった

そして家族や友達に泣かれ

本来の場所に戻る

もし、友達も家族もいなければ

私は今頃　どうにかなっていたのかもしれない

落ちる所まで落ちてみたい

そんな気持ちになる時がある

それは今でも時々その衝動にかられる

だけど・・・

それをするには　

歳を重ねるごとに　背負う物が重過ぎて

身動きできずに妄想だけが膨らんで

私の妙な癖を

なんとか落ち着かせていてくれる

今、それをしたら・・・とんでもない騒ぎになるか

それとも

「ああ・・・あの人のことだからありえるね」

そういわれるか・・・

背負っている物を全部投げ出して

電車に飛び乗るには

少し歳をとりすぎたかもしれないな